ご訪問ありがとうございます。
このブログでは、
アートがどのように生活を豊かにするのか?
をご紹介しています。
今回は、アートの大切な要素の1つ、
色彩についてです。
色彩が私たちにどんな心理効果を与えているのか?
長年カラーセラピストとして
色彩と心理にかかわってきた筆者が、
【色彩心理学】について徹底解説します。
Contents
色彩心理学とは
私たちは普段の生活の中で、
特に意識することなくさまざまな色と接しています。
人の精神状態や感情は色と深い関係があり、
例えば、
赤やオレンジなどの暖色系の部屋にいる場合と
水色や青色などの寒色系の部屋にいる場合では、
実際の部屋の温度が同じでも、
体感温度は3度違うと言われています。
3度というのは非常に大きな違いです。
このように、
「色」は私たちの生活と切っても
切り離せない関係にあるのです。
色彩が人に与える心理作用を研究した学問を
「色彩心理学」といいます。
色彩心理学は、
光のもたらす色彩の本質を研究し、
心理学のみならず、
色彩学、哲学、文化人類学、宗教にまで
広い範囲にわたって人間と色との関わりを
掘り下げるものです。
色彩心理学の歴史
色彩と心理学のかかわりについて
歴史を紐解いてみましょう。
古代エジプト時代、
色は人を癒すために様々に用いられていたといわれます。
ヘリオポリスで行われてたヘリオセラピー(太陽療法)や、
光やプリズムの色光を浴びたり、
神殿は、各部屋ごとに色ガラスによって、
特定の色の光が差し込むように作られていました。
また、クリスタルや宝石を身に纏うことで、
その色の効果から健康と美と運気を
手に入れようとしていたといわれます。
このように、色が与える様々な働きを、
人類は古代から気づき利用していたようです。
アリストテレスの『色彩論』
色の研究が始まったのは、
古代ギリシア時代とされています。
哲学者プラトンは、
芸術に否定的だったといわれ、
「混色して新しい色を作るのは神への冒涜行為」
と述べましたが、
弟子であるアリストテレスは
「色は白と黒の間に生じる」とする『色彩論』を
著し、有彩色の配列を
白、黄、赤、緑、青、紫、黒の7色と
考えました。
プラトンとアリストテレスの思想は、
18世紀にイギリスの物理学者ニュートンが登場するまで、
ヨーロッパのキリスト教社会における
色彩文化に大きな影響を与えました。
ニュートンのプリズム実験
14~16世紀のルネサンス期には、
レオナルド・ダ・ビンチを筆頭とする
画家たちによって色の研究も行われましたが、
1704年にニュートンが著した『光学』は、
それまでの色と光に関する常識を覆しました。
ニュートンは、
太陽の光をプリズム(透明なガラスの三角柱)に
当てると屈折率の違いにより分光し、
「赤」「橙」「黄」「緑」「藍(あい)」「青紫」
の7色の帯状の光ができることを発見しました。
その光のことをスペクトルといい、
太陽光などの白い光は
様々な色の光が重なったものだという実験報告を
発表したのです。
この光と色の認識が
現代の色の科学の基礎となっています。
色彩心理の基礎をつくったゲーテ
一方、詩人として知られるゲーテは、
アリストテレスに深く傾倒する哲学者でもあり、
1810年に『色彩論』を発表して、
ニュートンを批判しました。
ゲーテは、
「色彩は、光と闇との相互作用によって生じる」と主張し、
色の生理的作用や感覚的作用を述べたのです。
色が人にどのような影響を与えるか
という点に注目したゲーテは、
現在の色彩心理の基盤をつくったとされています。
そして19世になると、
心理学の前身である
「精神物理学」や「感覚生理学」が成立し、
色は視覚の現象ととらえられて、研究が進みます。
技術的な進歩によって色を扱う環境が整ってくると、
色彩学も基礎が固まっていきました。
1839年にフランスの化学者シュブルールが、
人の感覚から考えた色の配列である
『色の同時対比の法則』を発表し、
多くの芸術家に影響を与えると同時に、
色彩学と心理学の関係が近づきました。
色彩学の実用的な分野での発展
20世紀には、
色彩学は実用的な分野で発展していきます。
アルバート・H・マンセルが
1905年に「色彩表記」
フレンドリッヒ・オストワルトが
1918年に「色彩の調和」を発表し、
色をとらえるためのカラーシステムを考案しました。
マンセルのカラーシステムは、
現在も広い分野で使用されています。
1919年には、建築を含む美術、
工芸の学校として世界的に有名な
バウハウスがドイツに設立され、
ここの教師であったスイスのイッテンが、
色の効果と影響について学生に指導しました。
世界初のカラーコンサルタントとして活躍した
アメリカのビレンは、
工場の生産性を高める色の指摘や、
安全標識の色の開発が有名で、
安全標識の開発は、
1953年に国際標準化機構に「安全色彩」として採択され、
全世界に推奨されました。
消化器や火災報知機の赤、
注意喚起を表す黄と黒の縞などは、
ビレンが考案したものです。
またビレンは、色が与える心理的影響や、
色の好みによる性格判断なども発表しました。
色彩心理学の提唱と今後への期待
近年、人が色をどのように感じ、
どのような影響を受けるのかという研究は、
色彩学と心理学が重なり、
「色彩心理学」と呼ばれる分野が提唱されました。
しかし、
心理学は脳の研究と切り離せない時代となり、
科学的な検証が高いレベルで求められるために、
色彩心理学は、
いまだ確立に至ってはいません。
心の治療や、心の健康を維持するために
色彩は確実に役立っており、
色彩心理に関する本や論文も数多く発表されてきています。
ファッションや商品の売上向上、
精神の癒しや落ち着きのためといった
必要な場面に必要な色が使われるなど、
色と心理のかかわりには
大きな関心と期待が寄せられており、
さらなる研究と実験による
色彩心理学の確立が待たれています。
色彩が人に与える影響
そもそも、
人は色からどのような影響を受けるのでしょうか。
人が色から受ける影響を大きく分けると、
以下の4つになります。
- 心理的影響→対象物を認識させやすくする
- 生理的影響→神経などに作用する
- 感情的影響→感情や気分を誘導する
- 文化的影響→特定の国や地域でのみ特別な意味を持つ
では、一つずつ見ていきましょう。
心理的影響
1つ目の心理的影響とは、
対象のものを認識させやすくすることです。
各企業やブランドのロゴには決まった色があります。
例えば、コーヒーショップは茶色や黒、
英会話教室は青や黄色といった風に
それぞれにブランドカラーがあることで
人々がそれを認識しやすくなるのです。
生理的影響
2つ目の生理的影響とは、
私たちの神経や細胞への影響です。
例えば、色によって心拍数が上がったり、
反対に心拍数を下げるよう促すことができます。
他にも、色によってリラックスさせたり、
ホルモンの分泌を促したり、
免疫力を高めたりすることもできます。
色は、それだけ大きな影響力を持っているということなのです。
感情的影響
3つ目の感情的影響とは、
私たちの感情、気分への影響です。
私たちは色によって、
明るい気持ちになったり、
暗い気持ちになったり、リラックスしたりします。
例えば、激辛料理のメニュー表が、
黒い字で「辛い」と書かれているよりも、
真っ赤な色で「辛い」と書かれている方が、
より辛さが伝わりやすいというわけです。
文化的影響
4つ目の文化的影響とは、
文化によって異なる色に対するイメージです。
国ごとの歴史や地理的な違いによって
文化は異なりますが、
それにともなって色が与える印象にも違いが生じます。
例えば、日本人は赤い円を見ると、
どこか日の丸を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、
それは日本の歴史や文化によって
そのような印象を受けているに過ぎません。
別の国においては、また違う印象を持つことになるでしょう。
このように、色は様々な形で人の心理状態に作用します。
色彩の心理効果
色の感じ方には個人差がありますが、
各色がもつ一般的なイメージと、期待できる作用を紹介します。
赤が与える心理効果
赤色は「活力・情熱・興奮」といった
強いエネルギーをイメージする色です。
どんなことにも挑戦したがる積極派の色。
好奇心旺盛、天真爛漫な人はこの色を好む傾向にあるようです。
また、
やる気になっている時
元気がほしい時
自信を取り戻したい時
自分をアピールしたい時など、
エネルギーが満ち溢れているか補給したい時に
赤が好きになる人が多いです。
一方で、
赤には「怒り・攻撃的」といった
ネガティブなイメージもあります。
怒りや攻撃性も強いエネルギーのひとつ。
活力や情熱と同じ強いエネルギーが、
ネガティブな表れ方をしたものです。
赤はとても自己主張が激しく、
小さくても目立つ色です。
人に警戒心を抱かせたり、
注意を喚起したり、
神経を興奮させて心拍数を上げる効果があるため、
商品パッケージや広告などで、
購買を促すためによく使われます。
また、
信号機やパトランプ、
消火器など、危険を表すサインとしても利用されています。
血や肉・熟した果実の色であり、
遠い昔から「生命に直結する」色でした。
そのため人は
本能的に赤に反応するようなったと考えられます。
また、
食欲や性欲といった
動物的な生きる力(生命力)を高める色でもあります。
オレンジが与える心理効果
オレンジは赤と黄色が混ざった色で、
太陽や炎のような
陽気であたたかい高揚感を表す色です。
オレンジが好きな人は、
陽気で人付き合いがよく社交的なタイプが多いです。
さびしがり屋やお人好しが多いのも特徴です。
胃腸を刺激し食欲を促す効果があるので、
食欲がない日が続くなら
食卓に取り入れるといいでしょう。
キッチンや食卓にオレンジ色があると、
料理も食事も楽しくなります。
オレンジは暖色の中でも
比較的穏やかな色なので、
好き嫌いの差が少なく、
比較的万人に受け入れられやすい色だと思われます。
さらにオレンジ色は、
陽気な印象を与えるだけではなく
体を活動的にする効果があり、
新陳代謝を促進したり、
食欲を増進させる効果があるため、
飲食関連のパッケージ・WebサイトのCVエリアなどに
多く使用されています。
橙のやさしくてあたたかい光は、
恐怖やプレッシャーによる心の不安や
抑圧を取り除く効果があります。
心が乱れている時や不安で押しつぶされそうな時は、
オレンジ色の光を見れば、
心身のバランスを整えることができるでしょう。
黄が与える心理効果
黄色は太陽の光にもっとも近い色で、
古代のエジプトやマヤ文明では
太陽を表す色として崇拝されてきました。
黄色は明るい太陽のように
人々に希望と喜びを与え、
楽しい感情を生み出す色です。
明るく賑やかな雰囲気を連想させ、
希望を感じさせます。
強い希望を抱いているときに
鮮やかな黄色を好む傾向があります。
また希望をかなえるために
乗り越えなけらばならないハードルがあるとき、
黄色+青や黒という高コントラストな
配色を好む傾向があります。
黄色はとても目立つ色で、
危険を表すサインとして使われています。
自然界ならトラやハチの縞模様、
人工物なら踏切や工事・立ち入り禁止の看板のように
黄色+黒は危険を表しているものが多いです。
また、黄色は左脳を刺激し知性を高める色です。
理解力、記憶力、判断力が高まり、心の不安を解消します。
人前で話すのが苦手な人でも、
黄色を使うと頭の回転が速くなり
会話をスムーズに運ぶことができるようになります。
また、自己アピールの強い人は黄色を好む傾向があります。
自分の方を向いてほしい=甘えの気持ちが強いときに
黄色が気になります。
黄色は赤と並んで子どもが最も好む色です。
子どもがもっている「甘え・無邪気さ・自己中心的」
といったイメージともぴったり合いますね。
緑が与える心理効果
緑は暖色でも寒色でもない
「中間色」でもっとも刺激の少ない色です。
物理的にも人が見える色(可視光)の
真ん中あたりに位置し、
心身のバランスを整えリラックスさせる効果があります。
この色が好きな人は、
控えめで目立ちたがらず他人との関係を大切にし、
友情や仕事関係を継続させることに気を配る傾向があります。
仕事においても生活においても、
どんなことにおいてもバランスを重視します。
また刺激の少ない緑は、
見る人に安心感を与え、
落着きと安らぎをもたらす効果があります。
生理的影響として
血圧を下げる効果があるともいわれています。
緑は自然や平和をイメージさせ、
自然がもつ癒しの効果をもたらします。
またスクスク伸びる草木のように、
健康と成長をイメージさせる色です。
緑は刺激の少ない色で、
積極的で活発な人には好まれない傾向があります。
「保守的・受動的・マイペース」といった
補色の赤とは正反対のイメージももつ色です。
青が与える心理効果
青色は、
爽やか・冷静・誠実・知的・清潔・冷たい
などの印象があります。
青色を好む人は、
じっくり理性的に物事を考えて、行動を起こす慎重派。
他人にいつも上品な印象を与えたいと思っていて、
清潔感を意識しています。
どんなことにも粘り強く当たりますが、
少しプライドが高いという一面も持っています。
ちなみに青は世界で最も人気のある色です。
青は心身の興奮を鎮め、
感情を抑える色です。
青の効果を取り入れれば、
心身が落ち着き、
感情にとらわれず冷静に物事を判断できるようになります。
これは青の光が「副交感神経」を刺激し、
脈拍や体温が下がり、
呼吸もゆっくりと深くなるためと考えられます。
青は心身を落ち着かせ、
長時間の集中力を助けるので、
単純作業や頭脳労働の場所で使うと効果的です。
集中力を乱さず、冷静な判断力で、
飽きずに的確な仕事をすすめることが
できるようになるでしょう。
青には「クール・爽やか・信頼感」
といったイメージがあるので、
ブランドのイメージカラーとして使われたり、
スーツやシャツの色に用いられたりしています。
また、冷んやりとした印象を与えるので、
涼しい印象を与えたい時にも有効です。
また、誠実さを感じさせる色なので、
人とのコミュニケーション、
特に1対1のコミュニケーションをスムーズにする効果があります。
紫が与える心理効果
紫色は「活発な赤」と「抑制の青」
という正反対な2色が混ざった色です。
赤と青のように、
ぶつかり合う2つの心が葛藤状態にあるとき、
両方の性質を持つ紫色が心のバランスを整えてくれます。
紫は、よく欲求不満の色とか病的な色と言われます。
しかし本当は心身のバランスを整える癒しの色です。
心身が疲れてしまったときに
紫の癒しを欲しているのです。
高級感がありエレガントな印象を与えます。
かつて冠位十二階の最上位を示す色が紫色だったこともあり、
高貴な印象を感じさせる理由の一つかもしれません。
また、紫色は想像力を掻き立て、
感受性を高める色でもあります。
紫はスピリチュアリティを象徴し、
セラピストやヒーラーが好む色でもあります。
遠い昔から宗教色として尊ばれてきた色で、
自分の潜在能力に気づかせてくれる色でもあります。
紫は深い瞑想に導き、
潜在能力を引き出す色なので、
精神を集中したいときには紫を取り入れるといいでしょう。
ピンクが与える心理効果
ピンクは、
恋愛・しあわせ・思いやりなどの
やさしいイメージをもつ色です。
恋に夢中の時や、幸せで充実している時、
また愛や幸せを欲している時などに
ピンクが気になります。
ピンク色は若返りの色、
恋愛の色とも言われていて、
特に女性は身につけていると
老化防止につながると言われています。
この色が好きな人は穏やかで優しく、
また細かいことに気がきく人です。
また、あまえたがりで誰かに「守られたい」と
強く思う傾向があります。
ピンクは女性らしさをイメージさせ、
女性に最も好まれる色の一つです。
しかし一方で女性に最も嫌われる色でもあります。
子どもの時に女性らしさを強要された女性や、
女性らしさに距離をおく女性は、
ピンクを好まない傾向があります。
ピンク=女性らしいというイメージに
頭で抵抗しているケースです。
しかしそんな場合でも
心ではピンクを好きだったりもします。
ピンクは味覚的な甘さを刺激する色なので、
ダイエットのときには注意しましょう。
甘いものがとてもおいしく感じます。
白が与える心理効果
白色は、
純真・純潔・神聖・清潔などの印象を与えます。
そういった印象からか、
病院や飲食店などの服装では
白い制服が使われることも多いです。
白が好きな人は理念追及派です。
卑怯、不正、不誠実を嫌います。
そのためまっすぐに人にぶつかっていくことができる人です。
完全主義的傾向が強く、
それが時に、トラブルの原因になることもあるかもしれません。
また、白色は「白紙に戻す」という言葉もあるように、
気持ちをリセットさせるような効果があります。
黒が与える心理効果
黒色は、
高級感や力強い印象を与えます。
ピンク色が女性というイメージなのに対して、
黒色は男性のイメージを与えます。
また、葬式などの喪服から死を象徴する色でもあります。
黒を好む人は、
強さや力を見せることで、
本当の自分の姿を覆い隠そうとする傾向があるとか。
繊細な心の持ち主なのに、
それを人に悟られることを嫌う人が多いようです。
色彩心理とアート
色彩の心理効果を使って、
選ぶ色から
今の自分の精神状態に気づいたり、
今の自分に与えたい効果を色からもらうことができます。
例えば、毎日過ごすお気に入りの部屋に、
好みの色彩の絵画などのアートを飾ることで、
必要な色彩の効果を得ることができますし、
今の自分がどんな心理状態で、
何を必要としているのかがわかり、
自己理解が進みます。
好きな色彩で絵を描くのもおすすめです。
絵を描いている間に色を感じ、
色彩の効果を得ることができます。
自分を知ることは、
より良くなっていくための初めの1歩ですし、
好みの色は自分の必要を映し出している
のですから、
アートを飾ることは、まさに一石二鳥ですね。
自分で描いたアートを飾れば最高です!
生活の中に、
ぜひアートを取り入れてみてください。
いつもの日常に彩が増すでしょう。
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